解析よもやま話【第32回:多目的最適化】

Posted 03/19/19

衝突したほうも、されたほうも守りたい

衝突物から何かを守りたい場合、衝突される側をとにかく強くすれば良いです。一方で、衝突物を守りたい場合、衝突される側をとにかく弱くすると良いです。しかし、例えば自動車の衝突のように、衝突する側、衝突される側、どちらも守りたい場合はどうでしょうか?この場合、衝撃保護部材は、強すぎず、弱すぎもしない、絶妙な強さが求められます。本例では、衝突解析にAltair Radioss、絶妙な強さの探索にAltair HyperStudyを使用し、その絶妙な強さとなる衝突保護部材の設計を探索します。形状こそ単純ですが、非常に実践的な例題です。

衝突したほうも、されたほうも守りたい

評価値は加速度と変位

衝突体の加速度が小さければ、衝突体へのダメージも小さいと判断できます。また、衝突体の変位が小さいということは、衝撃保護部材への突入量が小さいということで、衝突された側のダメージが小さいと判断できます。

よって、加速度や変位を“望ましい値”に収めるように設計します。今回は、以下のような8種類の設計変更パターンがあるとします。

設計パラメータ

設計パラメータ① フィレット半径:15~25mm

設計パラメータ

設計パラメータ② 外側部材長さ:280~360mm

設計パラメータ

設計パラメータ③ 外側部材幅:160~240mm

設計パラメータ

設計パラメータ④ 内部板配置幅:120~200mm

設計パラメータ

設計パラメータ⑤~⑧ 4つの部品の板厚:1~2mm

設計
パラメータ
HyperStudy
パラメータ
HyperStudy 最小値
→ 設計最小値
HyperStudy 最大値
→ 設計最大値
フィレット半径 Radius -1 → 15mm 1 → 25mm
外側部材長さ length_external -1 → 280mm 1 → 360mm
外側部材幅 width_external -1 → 160mm 1 → 240mm
内部板配置幅 length_internal -1 → 120mm 1 → 200mm
外側スキン板厚 th_external_skin 1 → 1mm 2 → 2mm
内側スキン板厚 th_internal_skin 1 → 1mm 2 → 2mm
外側フランジ板厚 th_external_flange 1 → 1mm 2 → 2mm
内側フランジ板厚 th_internal_flange 1 → 1mm 2 → 2mm

HyperStudyにおけるパラメータと設計パラメータの対応表

 

直交試験で重要パラメータを洗い出す

いきなり最適化をやるのも良いのですが、このように設計変数が多い場合、直交試験を行って、検討すべきパラメータを洗い出すのも一つの手法です。各パラメータを3レベルとして27回の試験を行いました。

パレートプロットにより、内部板配置幅、内側スキン板厚、外側スキン板厚、外側部材幅の4つのパラメータが80~90%の寄与をしていることが分かります。この4つを重点的に検討する必要がありそうです。

寄与率の高い上位4つのパラメータに絞る

寄与率の高い上位4つのパラメータに絞る

最適化でちょうどよい設計案を探索する

この課題では、加速度と変位が相反する関係になると予測できますが、例えば、変位を17mmに抑えた場合加速度はどれくらいになるのか、というようなことまでは分かりません。このような場合は、変位と加速度をともに最小化するという、多目的最適化が便利です。

今回は、先ほど洗い出した4つの重要パラメータだけを最適化してみます。反復回数は50回です。

HyperStudyで重要なパラメータのみを最適化

 HyperStudyで重要なパラメータのみを最適化する

多目的最適化を行うと、このように性能の限界を示すパレート図が得られます。これは、今回の設計でどのあたりを目指していくのかという良い指針になります。

多目的最適化の結果

多目的最適化の結果

内部板配置幅の大きさに応じて丸の大きさを変えた図

内部板配置幅の大きさに応じて丸の大きさを変えた図

3つの最適解

3つの最適解を確認。内部板配置幅が現象をうまくコントロールしていることが分かります。

設計業務に使える1Dモデル化

HyperStudyがDOEや最適化に使った大量の計算結果からエクセルによる1D予測モデルを作成します。実際の設計業務において、最適解をそのまま使えない場合も多いと思いますが、この1Dモデルですばやく結果の予測値を知ることができます。

エクセルによる1D予測モデル

このお話はAltair HyperWorksに付属する例題をアレンジしたものです。HyperWorksご購入後、すぐにお試しいただけます。

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Nobuyuki Fukuoka

Written by Nobuyuki Fukuoka

Technical Manager