数値解法の種類(有限要素法(FEM)・境界要素法・有限体積法・有限差分法)
様々な数値解法の概要
1. 有限要素法(FEM)
最も一般的な数値的解法です。
有限要素法 (FEM)とは、偏微分方程式 (PDE)の定義域 (W)の近似解を求めるときに使用する数値的解法です。PDEを解くときの最大の難関は、解を近似的に表す基底関数を作る工程です。基底関数の作り方は数多くありますが、どれを使用するかは選択した定式化によって決まります。FEMは、時間経過とともに変化する複雑な領域の偏微分方程式を解くのに非常に長けています。
線形 / 非線形 / 座屈 / 熱 / 動的 / 疲労解析で使用できます。FEMは後ほど詳述します。
FEAとFEMは別物︖
有限要素法 (FEM)と有限要素解析 (FEA)は同じものを指します。一般的に産業界では“FEA”、大学では“FEM”という呼び方がよく使われます。
紛らわしい用語にFMEAがありますが、FMEAは故障モード影響解析の略で、FEAやFEMとは異なります。FEAとFEMは研究開発部門でのみ使用され、FMEAは部門を問わずに使用されます。
2. 境界要素法(BEM)
境界要素法(BEM)は、音響やNVHの問題を非常に強力に、かつ効率よく解くことができる解法です。有限要素法と同様に節点と要素を用いますが、その名のとおり、対象領域の境界についてのみ考えます。そのため、たとえば立体の問題の場合は外側の表面しか考慮せず、領域が平面の場合は外縁しか考慮しません。このように次元を1つ減らすことにより、問題を素早く解くことができます。
境界要素法 (BEM)は、線形偏微分方程式を定式化した積分方程式を解く数値的解法です。この積分方程式は、支配偏微分方程式の厳密解と見なせる場合もあります。BEMでは、偏微分方程式によって定義された領域のすべての値を求めるのではなく、与えられた境界条件を用いて境界値を積分方程式に近似することを試みます。この積分方程式は、解析後のポストプロセスの段階で、解析領域内の任意点の解を数値的に計算するために再利用することもできます。BEMは一般的に、比表面積が小さい問題を、有限要素法などの解法よりも少ない計算リソースで効率よく解くことができます (BEMは、モデルの表面にかけた“メッシュ(網)”を解くイメージです)。ただし多くの問題では、FDM、FVM、FEMなどの体積離散化解法よりも効率の面で大きく劣ります。
3. 有限体積法(FVM)
有限体積法 (FVM)は、偏微分方程式を代数方程式で表現し、評価するための解法です(LeVeque, 2002; Toro, 1999)。一般的な形状を離散化した空間で値を計算するFDMと非常によく似ています。FVMでは、発散項を含む偏微分方程式の体積積分を、発散定理を用いて表面積分に変換します。その後それらの項を、各有限体積の表面の流束として評価します。任意の体積に流入する流束は、隣接する体積から流出する流束と等しいことから、有限体積法は保存的な解法と言えます。有限体積法のもう1つの長所は、非構造格子を扱うための定式化が容易な点です。FVMは多くの数値流体力学パッケージで使用されています。
4. 有限差分法(FDM)
有限要素法と共通点の多い解法です。有限差分法 (FDM)は、一般的に微分方程式を解く解法と言われています。テイラー級数を用いて微分方程式を代数方程式に変換しますが、変換時、次数の高い項は無視されます。FDMは、熱-CFD連成問題を解くためにBEMやFVMと組み合わせて使用されます。
*FEM、BEM、FVMは積分方程式を離散化しますが、FDMは偏微分方程式を離散化します。
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